僕の耳は10年代前半のDeep House全盛期から前に進めていない
アンダーグラウンドダンスミュージックにおいて、2012, 13年ごろのDeep House, Tech Houseの盛り上がりを超えるムーブメントは2020年現在少なくとも起こっていないし、もしかしたら今後あの頃以上にHouse Musicが革命を起こす日は来ないかもしれない
Richie HawtinがIbizaのSpaceでENTERを主催していた日々、MixmagでSkreamがAcid, Disco, Houseを昇華させた芸術とも言えるミックスを回していた頃に自分の耳は置き去りだ
Duskyの全盛期が重なったのもシーンをあれほどに盛り上げた要因といえる(このセットが好きすぎて大学の合格発表当日にこれを聴きながら家の周りを散歩したのを覚えている)
デビューアルバムComfortを発表してMaya Jane Colesが勢いづいていたことも忘れてはいけない。かれこれ10年ほど彼女を追ってきたが、個人的には当時BBC Radio 1で披露したこのアルバムを軸としたEssential Mixが一番好きだ
Daniel AveryのNaive ResponseやNeed Electricはこの期間を代表するミックスの中で最も頻繁に登場したトラックといっても過言ではない。2000年以降で、ベストアルバムを決めるとしたら、これらの曲が収録されたDaniel AveryのDrone Logicを挙げる
Singapore Management UniversityでのHCI研究インターン
このポストは 研究留学 Advent Calender 2019 の12/17に相当するものでしたが、己の不徳の致すところにより、2020年2月現在の公開となっています
アドベントカレンダーの取りまとめをされている樋口さん、この度は大変申し訳ありませんでした
私が2019年春にシンガポールの大学で行った研究インターンについて書きます
私は現在東大の学部4年生で、この3月に卒業後、夏からシカゴ大学のComputer Scienceの博士課程に進学します。研究はHuman Computer Interaction (HCI) という分野で行なっています
もともとHCIの研究を行おうと決めたのが2年ほど前で、その時既に分野の違う学部専攻(環境工学, 応用化学)に所属していました。そのため、これまでHCIに関する研究機会は全て研究インターンなどを通して独自に得てきました
概要
いつ行ったか: 2019年1月~4月
どこへ行ったか: Singapore Management University (SMU)
何をやったか: crowdsourcingにおけるworkers' earningに関する研究
どうやって行ったか: 受け入れ先の先生と直接やりとり
背景
インターンに至るまで
遡ること2年前、大学の交換留学制度を使って1年間シンガポール国立大学 (NUS)に留学していました (8/2017〜5/2018)
2018年4月ごろ、NUSで月例開催の分野のトークイベントを通して今回のインターン先PIであるProf. Kotaro Hara (以下原さん)に出会い、自分が帰国する直前の5月に彼のラボに遊びに行く機会がありました
その際にインターンしないかという話をいただき、兼ねてより原さんの研究については存じ上げていたため、憧れの研究者と働くチャンスと考えその場で「是非やりたいです」と申し上げました
交換留学から帰国してしばらくたった2018年秋頃に改めて「RAの予算が取れた」とご連絡いただき、インターンが正式に決まりました
ビザや諸々の手続きについてはシンガポールは欧米と比べて簡単に済みます。自分は学部生 (学士号未取得)なこともあり、短期就労ビザではなく給与の出るトレーニングビザ的なもので滞在しました (詳細割愛)
受け入れ先PIについて
原さんはcrowdsourcingを活用したsidewalk accessibilityの向上や、crowdsourcingの市場構造やツールについての研究を行われている方です
HCI分野最大の国際会議であるCHIのProgram Comittieeもやられており、存在感のある日本人研究者としてもともと存じ上げており論文も読んでいました
さらに、彼は阪大の学部卒業から直接Maryland University の博士課程に進んで学位を取得しており、同じく学部卒業後に海外Ph.D.に進学する自分にとってキャリア上のロールモデルでもありました
先日の大学院出願に際して、推薦書執筆だけでなく出願書類に関するアドバイスまでいただきました。その節は本当にお世話になりました
Singapore Management University (SMU)
SMUは総合大学のNUS、理工系のNTUと並んでシンガポールで三本指に入る国立大学です。その形態は少し特殊で、工学部は無く、Business, Lawなどの社会科学学部群に School of Information Systemsが付加されたものとなっています (一橋大学に情報系の学科がついたイメージ)
School of Information SystemはCMUとのコラボレーションプログラムなども行なっており、在籍している教授陣の研究業績、スタッフや学生のアクティブさを見ても、非常に充実した研究・教育環境を備えていると感じました
研究
まだ論文が公開されていないため研究内容には触れず、どのように研究を進めたかを中心に書きます
3ヶ月という短期間の中、自分のした仕事は実装済みのインターフェースを使った60人規模のユーザースタディの設計・実施および実験結果の解析(データの特性に鑑みてベイズ統計を用いた)+原さんと共に論文の執筆といったところでした
時期ごとの進め方は以下
- 1月下旬: 実験設計、予備実験
- 2月上旬: 本実験
- 2月下旬: データ解析・解釈
- 3月上旬: データ解析・解釈、執筆
- 3月下旬: 執筆
- 4月上旬: 論文投稿
PIの原さんと1対1で議論する時間を多くいただくことができ、非常に手厚い指導を受けながら研究を進めることができました。指導というよりもはや二人三脚で常に並走してくださいました。感謝です
特に、ラボの方針で学生はResearch Journalをgoogle docsでつけることが習慣化しており、これが研究を効率的に進める鍵になりました。これは構造化された文章 (英語)+必要な図で構成されるフォーマルな研究日記のようなものです。1日~数日のスパンで更新していくことで、思考・進捗の記録と共有、それを元にした議論、さらに推敲をオンライン上で一箇所にまとめて行うことができます。これは以下のメリットとして換言可能です
- アイデア、進捗の取りこぼしを防止できる
- 共同研究者との進捗共有を非対面で柔軟に行える
- いつでも文書上で共同研究者からフィードバックをもらえる
- 推敲しながら小まめに進捗を文章にまとめることで論文執筆の負荷を分散できる
特に最後の執筆負荷の分散が肝で、きちんとジャーナルを書きながら研究を進めていたら、いつの間にかそれが論文の初稿になっていることが理想です(自分は全くできていないので精進...)
毎日Research Journalを更新しながらその都度、内容からライティングに至るまで具にフィードバックをもらう中で、自分の執筆レベルが如何に低いか、きちんとしたParagraph Writingができているかを常に意識させられました
締切までに論文の質を上げきることの重要性については東大の松尾先生が書いている通りですが、特に経験の浅い学生においては、このResearch Journalのように、研究開始時点からフィードバックをもらって論文を書く環境を作ることが大事だと思います
また、今回の滞在ではR, JAGSを用いたべイズ統計、心理統計 (ANOVAなど)、探索的データ解析など新しい知識も多く習得できました (リンクは主に参考にした教材)。こうしたインプットにおいても、事あるごとに原さんから参考文献をいただいていました。本当に恵まれた研究環境だったと感じます
生活
シンガポールは一般に物価が高いと思われていますが、トータル1年半ほど滞在してみて、庶民が暮らす分には東京と同程度だと感じます。一方、家賃については概して東京より高額です (ワンルームで10万円以上がデフォルト)
私は知り合いとシェアハウスをすることで家賃を65000円程度に抑えることができました。アクセスも大学までDoor to Doorで20分ほどと、好条件の物件だったと思います。こうした部屋探しに関する情報は学生向けの参加承認制facebookグループに転がっていることが多いです
近所にはNewton Food Centerという有名なフードコートがあり、研究終わりにここで焼き鳥や屋台シーフードを食べるのが日課でした
また、週末に研究室のメンバーや原さんと食事にいくことも多かったです。特に原さんとよく行ったThe Modern Izakayaは、串焼きや寿司といった日本食のおつまみが食べれてとてもオススメです
RiversideのHeadquartersというクラブには交換留学時から足繁く通っていました。House, Technoに絞った徹底的質重視のブッキングと音作り、赤いレーザーライトが舞う薄暗くスモーキーな空間からは「シカゴやデトロイトのWarehouse Partyをアジアでも実現する」というオーナーの哲学が垣間見えます。音楽好きの方もそうでない方も一度足を運んでいただきたいです
さいごに
原さんの研究室では現在、夏の研究インターンを募集しています
この春・夏あたり、シンガポールでHCIの研究インターンしたい学生さんいたら是非来てください。給料も若干出ます。研究内容は相談可。 https://t.co/NQmDWOz5af
— Kotaro Hara (@kotarohara) 2020年2月21日
ここに書いたように、充実した研究環境でしっかり鍛えてもらえることを保証します。研究内容が近い方はもちろんのこと、HCIの中で違うことをやっている人もぜひご検討ください
私自身、普段はデバイスを作っているのですがここで経験したことが研究者として一生物の財産になったと感じています。CVやポートフォリオは英語ですが、やりとりは日本語で大丈夫なので興味ある方はkotarohara@smu.edu.sgまでメールを送りましょう
Uberの自律走行車事故, 原因を考察してみた
Uberの自律走行車の死亡事故から約2週間が経過し, 情報もだいぶ上がってきました.
事故原因についての大まかな考察はこちらのwiredの記事で技術・制度の両面からすでになされているので, このブログでは技術面から少し詳しめに事故原因について考えてみようと思います.
事故概要についておさらい
- 2018年3月18日夜, 米国アリゾナ州にて自動車死亡事故が発生
- 自動走行モードで走行中のUber社の車両が歩行者と衝突
- 被害者は49歳女性, 事故当時自転車を押して車道を横断中
- 走行中の車両には緊急用にオペレーターが在中していた
車載カメラが捉えた衝突の瞬間. より具体的に状況がわかるかと思います.
なぜ事故が起こったのかを考えるために, 次項ではUberのシステムがいかにして事故を防ぐのかを書いていきます.
自律走行車の障害物検知メカニズム

Uberの自律走行車には大きく3種類の障害物検知センサが搭載されています.
- 赤外線ライダー(車体上部の箱っぽいやつ):
360度全方位に赤外線を照射し, その跳ね返りをもとに車体周辺の三次元距離データを数フィートから最大数百フィートの範囲でスキャンする. スキャンは毎秒数回行われる. - シグナルレーダー(車体前面):
電波を照射することでその跳ね返りをもとに周辺環境をスキャンする. 赤外線と異なり霧や雪による機能低下を起こさないため, ライダーセンサーの補助として使われる. - 遠近両用光学カメラ(車体上部の板っぽいやつ):
一般的なカメラの原理で車体周辺を撮影する. 上記2つと異なり, 色を検出できるため, 後述のアルゴリズム処理を加えることで, 正確なオブジェクトの特性検知(ex: 歩行者の特徴, 標識に書いてある文字...etc)を可能にする.
異なる役割のセンサを組み合わせることで, 複雑な周辺環境を漏れなく掌握しようとしているんですね.
続いて, センサからの情報はコンピュータービジョン(CV)アルゴリズムで処理されます.
そして, この処理を経た情報が, ハンドルやブレーキといった車体の動作に命令を出す指示系統に送られることによって, 最終的に自動走行車は安全に駆動することができます.

これらの機構を用いて, 一般的に自律走行車は, 下記のフローで人物を検知し安全に運行しています.

- CVアルゴリズムはまず, ライダーとレーダーの情報をもとに動く(or静止した)点のパターンとして歩行者を検知する. この情報のみでは我々人間が見てわかるようなレベルで歩行者の特徴を認識しているわけではない.
- これに加えて, 光学カメラで撮影された映像情報を処理することによって最終的にアルゴリズムは歩行者の情報を包括的に検知することができる.
- 検知された情報が運転命令系統に伝わり自律走行車は適切な挙動(ハンドル, ブレーキ)で事故を防ぐことができる.
しかし, 以上はあくまでもレギュラーケースであり, 今回の事故では様々な悪条件が重なりました.
今回の事故についてケース検証
掲載した事故映像を見てもらえばわかる通り, 大きく3つの要素がCVの認識プロセスにマイナスに働きました.
- 悪条件1: 現場は街灯が間隔おきに並ぶ夜道
- 悪条件2: 被害者は街灯に照らされていない区画にいた
- 悪条件3: 被害者は上下ともに暗めの服装で, 上半身は黒一色のコートを着用
条件1, 2より光学カメラセンサでは歩行者を事前に検出することができなかったと考えられます.(おそらくカメラセンサは暗視対応していない ※要調査)
これらを踏まえると, 映像を根拠に事故原因として以下の2つが考えられます.

- 可能性1: 歩行者を事前に検知できていたが, 運転系統への伝達が間に合わなかったor伝達系統が故障していた
- 可能性2: ライダーとレーダーの情報では歩行者を正しく検知することができなかった
ただし, 可能性1については, 下の記事に
"Uberのシステムは衝突の0.9秒前には被害者を検知できていた"
とあり, CVアルゴリズムから運転系統までのコミュニケーションに約1秒もかかるとは考えにくいです.
そのため, おそらく事故原因は可能性2であると思われます.
可能性2とは具体的には,
走行車は衝突の0.9秒前に被害者を検知することができた.
しかし, ライダーとレーダーの情報のみでは
車体前方に三次元のオブジェクト(人間)があり, 現在接近中, このままでは衝突する.
とまでは判断できなかった.
ということです.
ライダーからのデプス情報をもとに正確に環境情報を認識するアルゴリズムを実装することは, 自動運転技術の最も難しい課題でもあり, 今回の事故はその根本的な課題を突いているとみることもできます.
例えば, 下のようなデプス画像を見せられて, 人間にはなんとなくその情景がわかりますが, 機械学習ではこれを点の集合体としてではなく, 2次元の情景として理解させることは難しいのです.

また, 悪条件3の通り, 歩行者は夜間に黒めの服装であり, 赤外線は黒色の認識に弱いことから, ライダー情報からでは判断系統が正しく機能しなかったこともうかがえます.
まとめ
ここまでを総括して, 以下に筆者の考える事故原因を整理してみました.
- 自動走行車は判断アルゴリズムの決め手の部分で光学カメラに依ると頃が大きいが, 夜間であったことと被害者が暗闇にいたことから光学カメラが適切に機能しなかった
- 歩行者の服装は赤外線ライダーの検出メカニズムと相性が悪かった
- こうした不完全なセンサリングデータからでは, アルゴリズムは"パターンを検出"することはできたが, "歩行者を検知"することはできなかった
- アルゴリズムが衝突可能性があると判断しなかったため, 停止命令系統も作動しなかった
結論としては, 悪条件が重なったとはいえ正しく歩行者を認識することができなかったCVアルゴリズムに非があると言えます.
今後, 同様の事故を防ぐためには,
といった方向性が考えられますが,
今回の事故が起こってしまった以上は, これが現時点での自動運転技術の限界だと言えるでしょう.
最後に, そもそも搭乗オペレーターが機能していれば死亡事故には至らなかったのでは, と考える人は多いと思います.
あの視界状況とはいえ, ライトに歩行者が映ってから衝突までにハンドルなりブレーキをきることは人間の運転手であれば可能だったはずです.
人間がいるからこそ発生しうる, イレギュラーな状況への対処も含めて,
完璧に自律走行車に安全を遵守させるということが, 現時点では高望みだったのかもしれません.
※追記
これを書き終えた次の日にwiredが詳細な検証記事を出してました.
こちらの記事では, 事故原因として命令系統のバグも挙げられていますね.
このブログでは, 命令系統のバグに関しては一考してスルーしてましたが...
ブログ始めました
はじめまして,
自己紹介をします.
2018年3月現在, 東大の工学部3年生でシンガポール国立大学に留学している田中雄大と申します.
21歳になりました.
テクノロジーのアートや身体への実装に興味があり, 主にはIoTデバイスの開発などをやってます.
音楽が好きで, DJをしたり曲を作ったりもしています(soundcloud↓)
このブログは特定のテーマを持ったもの(留学記など)ではなく, 私が書きたいと思ったことを書く人生ログのようなものです.
そのため, 自分が主に取り組んでいる研究開発に関することから, 音楽, さらには時事ネタまでブログに書いていく予定です.
日々の思考や経験を文章に落とし込む過程でそれらをより自分の中に定着させることができるのではないかと思い始めました.
よろしくお願いします.